60代は、人生の大きな節目を迎える時期です。退職金や年金の受け取り方法を決定し、終活を開始するなど、これからの生活の土台を固める大切な期間となります。この時期に収入、支出、資産、保険、そして相続について最終調整を行うことで、安心かつ自分らしい生活を送るための準備が整います。
収入の確定と最適化で老後の基盤を固める
60代からの生活を安定させるためには、まず収入源を明確にし、最適化することが重要です。年金は老後の主要な収入源となるため、その受け取り方を慎重に検討する必要があります。
年金は、受給開始年齢によって受け取れる金額が増減します。ご自身のライフプランに合わせて、繰下げ受給や分割受給など、様々な選択肢を比較検討し、最適な受取方法をシミュレーションすることをおすすめします。また、退職金や企業年金についても、一時金で受け取るか、分割で受け取るかによって税負担や将来のキャッシュフローが大きく変わってきます。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合った方法を選ぶことが大切です。もし可能であれば、短時間の再雇用やフリーランスとしての就労、あるいは月数万円程度の副収入を得ることで、貯蓄の取り崩しを抑制し、より安定した生活を送ることができます。
支出のダウンサイジングで家計をスリムに
現役時代と同じような支出を続けると、老後の生活資金が不足する可能性があります。60代からは、支出のダウンサイジングを意識し、家計をスリムにすることが重要です。
一般的に、現役世帯の支出の約7割を目標に生活費を見直すことが推奨されています。特に固定費は、一度見直せば継続的な削減効果が期待できます。例えば、保険料は配偶者の扶養状況やご自身の保障ニーズに合わせて不要な特約を解約するなど、見直しを検討しましょう。住居費についても、「高齢者向け優良賃貸」への住み替えや、住宅ローンの借り換えなどを検討することで、負担を軽減できる場合があります。
通信費も、格安SIMへの移行や固定電話の解約など、無駄をなくす工夫ができます。食費や光熱費、医療費といった変動費については、大きな支出項目を抽出し、週単位で予算を設定して管理する「封筒分け管理」なども有効です。さらに、医療費や介護費用は予期せぬ出費となることが多いため、年間予算とは別に緊急枠としてあらかじめ積み立てておくことをおすすめします。
資産の把握と低リスク運用で安心を確保
これまでの人生で築き上げてきた資産を正確に把握し、リスクを抑えた運用を継続することも、60代からの「お金の使い方」見直しにおいて不可欠です。
まずは、預貯金、株式、不動産、保険の解約返戻金、そしてローン残高といった、ご自身の資産と負債を現在の売却価値で一覧化し、全体像を把握しましょう。次に、今後10年から20年間の収入と支出の予測をエクセルなどで可視化する「キャッシュフロー表」を作成し、貯蓄の取り崩しペースを確認します。これにより、将来の資金不足のリスクを早期に発見できます。
資産運用については、低リスクな運用を中心に資金を分散させることが賢明です。定期預金や国内債券、配当株など、流動性を維持できる運用方法を中心に検討し、急な資金が必要になった場合にも対応できる体制を整えておくことが大切です。
保険の最適化で無駄をなくす
60代になると、現役時代とは異なる保険のニーズが出てきます。公的医療保険や介護保険との兼ね合いも考慮し、加入している保険を最適化しましょう。
医療保険や介護保険については、公的な保障内容とご自身が加入している民間保険の重複や不足がないかを確認し、必要に応じて解約や見直しを行うことで、保険料の負担を軽減できます。また、お子様が独立された後などは、死亡保障の必要額が減少することが多いです。終身保障を削減するなど、ご自身のライフステージに合わせた見直しを行い、本当に必要な保障に絞り込むことをおすすめします。
終活と相続準備で未来への安心を繋ぐ
60代は、ご自身の「終活」を開始し、大切な方々へ財産を円滑に引き継ぐための相続準備を進めるのに最適な時期です。
エンディングノートを作成し、延命措置の意思表示、葬儀の方法、デジタル資産の管理方法などを具体的に明文化しておくことは、ご家族への負担を軽減し、ご自身の意思を尊重してもらうために非常に重要です。また、遺言書を作成し、財産分配の意向を明確にしておくことも忘れてはなりません。
公正証書遺言や自筆証書遺言など、ご自身の状況に合った形式を選び、法務局での保管サービスなども活用しましょう。相続税や贈与税の対策についても、暦年贈与や小規模宅地特例、保険金の非課税枠の活用など、専門家と相談しながら検討を進めることで、将来の負担を軽減できる可能性があります。
最後に
60代からの「お金の使い方」を見直すことは、安心で豊かな老後を送るための重要なステップです。年間、月間、そして週単位で「収支管理」「資産確認」「終活進捗」を習慣化し、毎年誕生日や年初にこのチェックリストを更新することで、急な支出や長寿リスクにも柔軟に対応できる家計体制を築くことができます。計画的に準備を進め、自分らしいセカンドライフを心ゆくまでお楽しみください。
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