高齢者の方々が保険を選ぶ際に、どのような点に注意すれば良いのか、疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。公的な制度だけではカバーしきれない「自己負担外の費用」や「長期入院・介護費用」、そして「葬儀・死後整理費用」といった部分を見極めることが非常に重要です。その上で、終身型の保障を選び、保障内容と保険料のバランスを考慮し、さらに気軽に相談できる窓口を見つけることが、最適な保険選びにつながります。
なぜ高齢者に保険が必要なのでしょうか
70歳以上の方には、公的医療保険によって医療費の自己負担割合が原則2割、または1割に引き下げられる制度があります。これは非常に心強い制度ですが、差額ベッド代や先進医療にかかる費用、通院のための交通費、入院中の日用品費などは、残念ながら全額自己負担となります。
2022年度の調査データによると、60代の方の入院時の自己負担額は平均で27.2万円、70代の方では17.1万円にのぼります。これに加えて、入院によって収入が減少するリスクも考慮すると、60代の方で33.2万円、70代の方で24.9万円もの支出リスクがあることが示されています。
また、65歳以上の要介護認定者数は増加傾向にあります。公的介護保険では、利用料の1割負担でサービスを受けられますが、自宅の改修費用や月々の介護費用など、自己負担となる部分も少なくありません。例えば、介護のための初期改修費として平均47万円、さらに月額9万円の介護費用が平均55ヶ月間続くと仮定すると、約542万円もの費用が必要になるケースもあります。公的制度だけでは、これらの費用をすべて賄うのは難しいのが現状です。
高齢者向け公的医療・介護制度の概要
高齢者の医療や介護を支える公的制度には、主に以下のものがあります。
-
前期高齢者医療制度
-
対象年齢は65歳から74歳までです。
-
自己負担割合は原則3割ですが、70歳から74歳までは2割に引き下げられます。
-
被用者保険や国民健康保険を継続して利用する形になります。
-
-
後期高齢者医療制度
-
対象年齢は75歳以上です。
-
自己負担割合は原則1割ですが、所得に応じて2割または3割となる場合があります。
-
この制度には扶養の概念がありません。
-
-
高額療養費制度
-
すべての世代が対象となる制度です。
-
医療費の自己負担額が上限を超えた場合、その超過分が払い戻されます。
-
特に、一定期間内に複数回高額な医療費を支払った場合には、「多数回該当」としてさらに自己負担が軽減される仕組みもあります。
-
-
公的介護保険
-
対象年齢は65歳以上です。
-
自己負担割合は原則1割ですが、所得に応じて2割または3割となることがあります。
-
要介護度に応じて利用できるサービスの利用料に上限が設けられています。
-
これらの制度は非常に手厚いものですが、やはり自己負担となる部分があることを理解しておくことが大切です。
高齢者保険選びの5つのポイント
高齢者向けの保険を選ぶ際には、以下の5つのポイントをしっかりと押さえることが重要です。
-
年齢・持病を加味し「加入可否」を確認する ご自身の年齢や持病の有無によって、加入できる保険の種類や条件が異なります。まずは、ご自身がどのような保険に加入できるのかを確認することが第一歩です。
-
終身タイプを選び「更新リスク」を排除する 一定期間ごとに契約を更新する「定期型」の保険は、更新のたびに保険料が上がってしまうリスクがあります。そのため、一生涯保障が続く「終身型」の保険を選ぶことで、将来的な保険料の上昇リスクを排除し、安心して保障を継続できます。
-
長期入院に対応する「支払限度日数」をチェックする 医療保険を選ぶ際には、入院給付金が支払われる日数に上限があるかどうか、その日数が十分であるかを確認しましょう。特に高齢になると、長期入院のリスクが高まるため、支払限度日数が長い保険を選ぶことが望ましいです。
-
必要最低限の保障で「保険料とのバランス」を最適化する 手厚い保障は安心につながりますが、その分保険料も高くなります。ご自身の家計状況や、公的制度でカバーできない部分を補うという視点から、必要最低限の保障に絞り、保険料とのバランスを最適化することが大切です。
-
Web/窓口・FP相談など「加入・相談のしやすさ」を確認する 保険選びは専門的な知識が必要となる場合もあります。Webサイトでの情報収集だけでなく、保険会社の窓口やファイナンシャルプランナー(FP)への相談など、ご自身が気軽に相談できる方法があるかを確認し、納得のいくまで相談できる環境を選ぶことが重要です。
タイプ別おすすめ保険比較
高齢者向けの保険には様々な種類があります。それぞれの主な保障内容、メリット、注意点を比較してみましょう。
-
死亡保険
-
主な保障内容 葬儀費用や死後の整理費用、遺族の生活費などに充てるためのまとまった保障が得られます。
-
メリット 万が一の際に、残された家族の経済的な負担を軽減できます。
-
注意点 年齢が上がるにつれて保険料が高額になる傾向があります。
-
-
少額短期保険(葬儀保険)
-
主な保障内容 300万円から1,000万円程度の保障を、1年から2年といった短い期間で提供します。
-
メリット 高年齢の方でも比較的加入しやすいのが特徴です。
-
注意点 保障期間が短いため、定期的な更新が必要になる場合があります。
-
-
医療保険
-
主な保障内容 入院給付金や手術給付金が支払われ、差額ベッド代など公的医療保険の自己負担外の費用を補填できます。
-
メリット 予期せぬ病気やケガによる入院・手術の際に、経済的な不安を軽減できます。
-
注意点 持病がある場合、加入が難しくなったり、保険料が割高になったりすることがあります。
-
-
がん保険
-
主な保障内容 がんと診断された際の一時金や、通院給付金などが支払われます。高額な先進医療費にも対応できる場合があります。
-
メリット がん治療は長期にわたることも多く、高額な費用がかかるケースが多いため、経済的な備えとして有効です。
-
注意点 がんの既往歴がある場合、加入ができないことがあります。
-
-
個人年金・トンチン年金
-
主な保障内容 老後の年金給付を目的とした保険です。
-
メリット 物価変動に備えながら、老後の資金形成を計画的に行えます。
-
注意点 トンチン年金の場合、途中で解約すると元本割れのリスクがあるため注意が必要です。
-
-
介護保険
-
主な保障内容 要介護認定を受けた際に一時金や年金が支払われ、介護の初期費用や自己負担分に充てることができます。
-
メリット 介護が必要になった際の経済的な負担を軽減し、質の高い介護サービスを受けるための資金として活用できます。
-
注意点 公的介護保険と連動するタイプと、保険会社独自の基準で給付されるタイプがあるため、どちらの基準かを確認することが重要です。
-
持病・高齢で申し込みやすい保険
持病がある方や高齢の方でも、保険に加入できる選択肢はあります。
-
引受基準緩和型保険
-
特徴 告知項目が通常の保険よりも少なく設定されており、持病がある方でも比較的加入しやすい保険です。
-
注意点 その分、保険料が割高になる傾向があり、また契約から一定期間は給付金が制限される期間(不担保期間)が設けられていることがあります。
-
-
無選択型保険
-
特徴 健康状態に関する告知が一切不要で、誰でも加入できる保険です。
-
注意点 告知がない分、保険料は最も高額に設定されています。
-
これらの保険は、通常の保険への加入が難しい場合の選択肢となりますが、保険料や保障内容をよく比較検討することが大切です。
まとめと行動ステップ
高齢者の保険選びは、「公的制度でカバーできない部分を補完すること」「長期的なリスクに備えること」、そして「家計への負担を最適化すること」が鍵となります。安心で豊かな老後を送るために、以下のステップを実践してみてはいかがでしょうか。
-
公的制度でカバーできない自己負担額を把握する まずは、ご自身の現在の健康状態や将来のライフプランを考慮し、公的医療保険や介護保険で賄いきれない自己負担額がどれくらいになるのかを具体的に把握することから始めましょう。
-
5つの選び方ポイントに沿って見直しを行う 「年齢・持病を加味した加入可否」「終身タイプ」「支払限度日数」「保険料とのバランス」「相談のしやすさ」という5つのポイントを参考に、ご自身に最適な保険の方向性を検討してみてください。
-
無料FP相談で複数社を比較シミュレーションする 保険選びは複雑に感じることも多いかもしれません。そんな時は、無料のファイナンシャルプランナー相談などを活用し、複数の保険会社のプランを比較検討することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら、ご自身の状況に合った最適なシミュレーションを行うことで、賢く節約しながら安心の備えを見つけることができるでしょう。
以上のステップを踏むことで、高齢者向け保険の最適解を見つけ、賢く節約しながら安心の備えを築いていくことができます。
コメント