やっと自分の家は持てた。住宅ローンの心配はなくなった。しかしこの家をどうするかについて考えなくてはならなくなった。
60代を迎え、老後の生活設計を考える中で、長年住み慣れた不動産をどうするかは多くの方が直面する大きなテーマです。売却して新たな生活を始めるべきか、それとも住み続けながら活用していくべきか、それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがあります。
このブログ記事では、60代からの不動産終活術として、「売却」と「保有」の選択肢を徹底的に比較し、皆様にとって最適な決断を下すためのお手伝いをさせていただきます。老後の生活資金や心身の負担軽減を最優先するなら「売却」が有利な場合が多いですが、住まいへの愛着を保ちつつ節税や現金化を図るなら「保有・活用(リースバックや賃貸)」も有力な選択肢となるでしょう。
不動産売却のメリットとデメリットを徹底解説
まず、ご自宅を売却する場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
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資金面
まとまった現金を得られるため、年金だけでは不足する生活費や将来の介護費用に充てることが可能です。また、相続税の納税資金を事前に確保できる点も大きな利点となります。
そして、そのお金の一部を運用に充てることも可能です。 -
生活利便性
現在の住まいがバリアフリーに対応していない、駅から遠い、管理が大変といった問題を抱えている場合、売却してご自身のライフスタイルに合ったバリアフリー住宅や駅に近い物件へ住み替えることができます。 -
税務・相続対策
居住用財産を売却する際には、3,000万円の特別控除や軽減税率といった特例を活用することで、譲渡所得税の負担を大幅に抑えることが可能です。これにより、相続時の遺産分割もスムーズに進めやすくなります。 -
心理的側面
住まいを現金化することで、心機一転、新たな生活をスタートできるという精神的なメリットも大きいでしょう。
デメリット
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資金面
売却価格が想定よりも低くなるケースがあります。特に築年数が古い物件や地方の物件では、希望小売価格の半額以下になる事例も存在します。 -
生活利便性
売却後に賃貸住宅へ移り住む場合、新たに家賃負担が発生し、老後の固定費が増加する可能性があります。 -
税務・相続対策
居住用財産の特例適用には要件があります。これらの要件を満たさない場合、思わぬ税負担が発生するリスクも考慮する必要があります。 -
心理的側面
長年住み慣れた思い出深い家を手放すことによる喪失感や、精神的なストレスを感じる方も少なくありません。
住まいを保有し続ける場合の隠れたコストとは
では、ご自宅を売却せずに保有し続ける場合、どのような費用がかかるのでしょうか。意外と見落としがちな維持費について確認していきましょう。
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固定資産税・都市計画税
物件の評価額によって変動しますが、月額に換算すると約4,000円から10,000円程度が目安となります。毎年発生する固定費です。 -
戸建てメンテナンス費用
戸建ての場合、外壁の塗り替え、給湯器やトイレの交換など、定期的な修繕が必要です。平均的な修繕費総額を20年で割ると、月々約23,000円程度の積立が必要になると言われています。 -
マンション管理費等
マンションの場合は、管理費、修繕積立金、その他使用料などが毎月発生します。月額平均で約30,481円が必要とされています。 -
保険料
火災保険や地震保険も必要不可欠な費用です。専有部分の保証や個人賠償責任を含めると、月々約3,000円から5,000円程度を見ておくと良いでしょう。
これらを合計すると、戸建てを保有し続ける場合、月々約50,000円(固定資産税+修繕積立相当+保険料)、マンションであれば月々約35,000円程度の維持費が必要となる計算になります。
知っておきたい相続税贈与税の最新情報と対策
2025年時点の相続税・贈与税の最新情報も、不動産の終活を考える上で非常に重要です。
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基礎控除額
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。この金額を超える財産がある場合に相続税が発生します。 -
小規模宅地等の特例
特定の要件を満たす宅地には、評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」が適用されます。しかし、近年、親世代と同居せず別居が増える「老老相続」のケースでは、この特例の適用要件を満たさない事例が増加しています。
生前に不動産を売却して現金化することで、相続税の納税資金を確保しやすくなります。また、自宅を賃貸事業用宅地等に切り替えることで、特例の適用を狙うといった対策も有効な場合があります。
売却だけじゃない 60代からの多様な不動産活用術
売却だけでなく、自宅を保有しながら活用していく方法もいくつかあります。
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リースバック
自宅を不動産会社などに売却した後も、賃貸契約を結んでそのまま住み続ける方法です。まとまった資金を得ながら、住み慣れた家に住み続けられるメリットがありますが、家賃負担が発生することや、将来的に賃貸人との関係でリスクが生じる可能性もあります。 -
リバースモーゲージ
自宅を担保にして金融機関から資金を借り入れ、契約者が死亡した際に自宅を売却して返済する方法です。毎月一定の資金を受け取れるメリットがありますが、利息負担や、担保となる不動産の評価額が高いこと、相続人の同意が必要となるなどの要件があります。 -
賃貸運用
自宅を賃貸物件として貸し出し、家賃収入を得る方法です。長期的な収益化が期待できますが、入居者募集や物件管理の負担、空室リスクなども考慮する必要があります。
あなたにとって最適な選択は 資金ニーズと心の価値で決める不動産終活のポイント
最終的に、売却と保有どちらが得かは、個々の状況によって異なります。以下のポイントを総合的に考慮して、最適な選択を検討しましょう。
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資金ニーズの有無
老後の生活費として、年金だけでは月々4~5万円の赤字となる夫婦世帯が多いと言われています。まとまった資金がすぐに必要なのであれば、売却が有利な選択肢となるでしょう。 -
生活の快適性
現在の住まいの階段の上り下り、雪かき、庭の草刈りなどが身体的な負担になっているのであれば、バリアフリー物件への住み替えを視野に入れた売却を検討する時期かもしれません。 -
相続対策
揉めやすい不動産を生前売却して現金化することで、遺産分割を円滑に進めることができます。特例適用要件が不透明なまま不動産を保有し続けると、相続時に思わぬ負担が増える可能性もあります。 -
精神的価値
長年住み慣れた家や地域コミュニティへの愛着が非常に強い場合は、リースバックや賃貸活用といった方法で、住まいとのつながりを保ちながら資金化を図ることも可能です。
まとめ
60代以降の不動産処分は、単なる財産整理ではなく、これからの人生をどのように過ごしたいかという「終活」の一環です。資金的な余裕、日々の生活における負担、将来の相続リスク、そして何よりもご自身の住まいに対する心理的な価値を総合的に勘案し、売却、保有、活用のそれぞれの選択肢の中から、ご自身とご家族にとっての最適解をじっくりと検討することが肝要です。わからない点などはファイナンシャルプランナーなどに聞くことも大切だと思います。
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