人生100年時代と言われる現代において、老後の生活設計は非常に重要です。特に、保険の見直しは、家計を守り、安心して暮らすために欠かせないテーマです。若いうちに加入した保険が、高齢になってから「無駄な出費」となってしまうケースは少なくありません。このブログ記事では、高齢者の方が保険で損をしないための見直し術について、公的制度との兼ね合いや、やめるべき保険の種類などを詳しく解説してまいります。
なぜ高齢者に保険の見直しが必要なのでしょうか?
高齢者になると、若い頃とはライフステージが大きく変化し、それに伴って必要な保障内容も大きく変わってきます。ここでは、保険見直しが必要となる主な理由を3つご紹介いたします。
1. 公的医療保険が手厚いから
日本の公的医療保険制度は、高齢者に対して非常に手厚い保障を提供しています。例えば、70歳から74歳までの方の医療費自己負担割合は2割、そして75歳以上になると原則1割(現役並み所得者は3割)となります。これにより、医療費の窓口負担が大幅に軽減されるため、民間の医療保険で多額の保障を準備する必要性が低くなるのです。
2. 高額療養費制度があるから
高額療養費制度は、月の医療費の自己負担額に上限が設けられている制度です。もし医療費が高額になっても、所得に応じた上限額を超えた分は払い戻されます。例えば、一般的な収入の方の場合、外来の自己負担は月に18,000円、入院を含めても月に57,600円程度が上限となります。この制度があることで、高額な医療費がかかることへの不安が大きく和らぎます。
3. 家計支出を最適化するため
保険料は年齢とともに高くなる傾向があります。一般的に、80歳の方の保険料は、20代の頃と比較して約6倍から9倍にもなると言われています。若い頃には必要だった保障も、退職して収入が年金中心になったり、貯蓄が増えたりすることで、過剰な保障に対して高い保険料を払い続けることになりかねません。家計の負担を軽減し、老後資金を有効活用するためにも、保険の見直しは不可欠なのです。
やめるべき保険と無駄になりやすい保障
では具体的に、高齢になったら見直しを検討すべき、あるいは無駄になりやすい保険や保障にはどのようなものがあるのでしょうか。
民間の終身医療保険・定期医療保険
前述の通り、75歳以上になると公的医療保険(後期高齢者医療制度)の自己負担割合が1割となり、高額療養費制度も利用できます。そのため、民間の終身医療保険や定期医療保険の必要性は原則として低くなります。特に定期医療保険は、更新するたびに保険料が割高になるため、大きな負担となる可能性があります。
がん保険
がん治療は高額になるイメージがありますが、公的医療保険の高額療養費制度や、先進医療給付金などでカバーできる場合が多いです。がん保険の保険料も決して安くはないため、公的保障で十分賄えるのであれば、過剰な負担となる恐れがあります。
過剰な死亡保険(高額保障型)
退職後、お子様が独立されているような状況では、高額な死亡保障は不要となるケースが多いです。葬儀費用や残された配偶者の生活費は、遺族年金やこれまでの貯蓄で賄える場合があります。もしもの時に備えるとしても、葬儀費用相当額(50万円〜100万円程度)に絞ることで、無駄な保険料を削減できます。
介護保険(民間特約)
公的介護保険制度を利用すれば、介護サービスにかかる自己負担は原則1割から3割に抑えられます。民間の介護保険特約は、公的制度ではカバーしきれない部分を補うものですが、その保険料と保障内容を比較検討し、本当に必要かを見極めることが重要です。
保険見直しの具体的なステップ
闇雲に保険を見直すのではなく、以下のステップに沿って計画的に進めることが大切です。
ステップ1 加入中の保険を「棚卸し」する
まずは、現在加入しているすべての保険証券を手元に用意してください。そして、それぞれの保険の「保障内容(種類、金額、保険期間、受取方法)」を一覧にまとめます。この作業を通じて、自分がどんな保障に加入しているのかを正確に把握することができます。
ステップ2 ライフステージと資産状況を確認する
年金収入はどのくらいか、貯蓄はいくらあるのか、家族構成に変化はないかなどを確認しましょう。葬儀費用や、相続が発生した場合の非課税枠なども考慮に入れながら、もしもの時に必要な保障額を具体的に算定することが重要です。
ステップ3 公的制度との重複をチェックする
医療、がん、介護など、それぞれの分野で公的制度がどこまでカバーしてくれるのかを正確に把握します。その上で、民間の保険で上乗せすべき部分がどこなのかを見極め、重複している保障がないかを確認しましょう。
ステップ4 保険料総額と支払可能額を比較する
現在の年間保険料の合計が、ご自身の家計にとって負担になっていないかを把握します。そして、無理なく支払い続けることができる「適正な保険料額」を検討し、目標を設定します。
ステップ5 解約・減額・新規加入の判断を行う
ステップ1〜4で整理した情報をもとに、過剰な保障は減額したり解約したりすることを検討します。そして、公的制度だけでは不足する部分(例えば、差額ベッド代や先進医療費の一部など)に限定して、必要最小限の特約や保険への新規加入を検討します。
保険見直しで特に重視すべきポイント
保険を見直す際には、特に以下の3つのポイントを意識することが、成功の鍵となります。
保障の「過不足」がないか
保障が過剰であれば、無駄な保険料を払い続けることになり家計を圧迫します。一方で、保障が不足していれば、いざという時にご自身やご家族に大きな経済的負担がかかる可能性があります。ご自身のライフスタイルや資産状況に合った、適切なバランスの保障を見つけることが最も重要です。
保険料の「増減タイミング」を把握する
加入している保険が「更新型」の場合、一定期間ごとに保険料が急増することがあります。特に高齢になってからの更新は、想像以上に保険料が高くなることも少なくありません。終身払い済み型や一時払い型の保険を選ぶことで、老後の保険料負担を抑えることができます。
受取方法を見直す
死亡保険金を受け取る方が誰になっているか、そして一時金で受け取るのか、それとも分割で受け取るのかといった受取方法も、ご家族の状況に合わせて定期的に再検討することをおすすめします。
まとめと実践アクション
高齢になってからの保険見直しは、家計の安定と老後の安心のために非常に大切な行動です。最後に、実践していただきたいアクションをまとめます。
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75歳以上の方は、民間の医療保険を原則として解約することを検討しましょう。 公的医療保険と高額療養費制度で十分な保障が得られます。
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がん保険や介護保険についても、公的制度でカバーされる範囲を重視し、民間の特約は最低限に抑えることを検討してください。
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死亡保険は、葬儀費用相当額に減額するなどして、相続非課税枠を活用することも考慮に入れましょう。
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「誰のための保障なのか」「何のための保障なのか」を明確にした上で、ご自身にとって必要最小限の保険だけを残すようにしてください。
これらのポイントを踏まえ、今すぐご自身の保険証券を取り寄せ、上記のステップで棚卸しと再設計を行うことを強くおすすめいたします。公的制度と民間の保険を賢く組み合わせることで、老後の家計を守りながら、不必要な保険料負担から解放され、より豊かなセカンドライフを送ることができるはずです。
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