将来のための準備について考えていきたいと思います。
将来の不安をなくし、大切なご家族に負担をかけないための準備を始めませんか?
エンディングノートと遺言書は、どちらもご自身の意思を伝えるための重要なツールですが、
その目的と法的効力には決定的な違いがあります。
この記事では、両者の違いをわかりやすく解説し、それぞれをどのように使い分けるのがベストかをご紹介します。この記事を読めば、安心して未来に向けた準備を進めることができます。
1分でわかるエンディングノートと遺言書の決定的な違い
まず結論からお伝えしますと、財産の分け方や相続人の指定など、**法的な効力を持たせたいことは「遺言書」**が必須です。一方で、医療や介護の希望、連絡先や口座情報など、**ご家族が迷わないための情報共有は「エンディングノート」**が最適です。この二つを役割分担して併用することが、最も安心な方法です。
エンディングノートは、ご自身の希望や考えを書き留めるためのメモであり、法律上の効力はありません。そのため、作成方法や保管方法は自由です。主な目的は、医療や介護の希望、葬儀やお墓の意向、連絡先リスト、資産の所在などを記し、残されたご家族への道しるべとすることです。
一方、遺言書は、法律で定められた要件を満たすことで法的な効力を持つ文書です。遺言書に書くことで、相続財産の分配や遺言執行者の指定など、法的な指示をすることができます。ただし、遺留分などの制約があり、「書けば何でも通る」わけではない点に注意が必要です。
それぞれでできること、できないことを把握しましょう
エンディングノートと遺言書は、それぞれで担える役割が異なります。
エンディングノートでは、医療や介護の希望(人生会議=ACP)、延命治療に対する考え、ご自身の葬儀やお墓に関する意向などを具体的に書き残すことができます。また、パソコンやスマートフォンのパスワードなどデジタル遺品の手がかり、重要書類の所在、親しい関係者の連絡先リストなどを共有することで、ご家族の手続き負担を大幅に減らすことができます。
しかし、エンディングノートには法的な拘束力がないため、相続に関する法的な指示(誰に何を相続させるなど)はできません。
一方、遺言書では、法的な要件を満たせば、相続財産の分配や遺贈(相続人以外の人に財産を譲る)、遺言執行者の指定など、ご自身の意思を法的に実現することができます。
ただし、遺言書にも限界があります。例えば、配偶者や子には「遺留分」という最低限保障された取り分があります。この遺留分を侵害するような内容を遺言書に書いた場合、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。
遺言書の3つの方式と選び方のポイント
遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの方式があります。
自筆証書遺言 ご自身で全文を手書きし、日付と氏名を記入して押印することで作成できます。財産目録については、パソコンでの作成や通帳のコピーの添付も可能です(ただし、各ページに署名と押印が必要です)。この方式は手軽に作成できますが、紛失や改ざんのリスクがあります。
**法務局の「自筆証書遺言書保管制度」**を利用すると、法務局で遺言書を保管してもらえるため、紛失や改ざんのリスクを避けられます。また、家庭裁判所の検認手続きが不要になるため、相続開始後の手続きがスムーズに進みます。
公正証書遺言 公証人が作成し、証人2名の立ち合いのもとで作成する方式です。原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。また、家庭裁判所の検認も不要で、最も確実性の高い方法とされています。作成には費用と手間がかかりますが、その確実性から金額が大きい財産や相続人が複数いる場合に特に推奨されます。
秘密証書遺言 遺言の内容を秘密にしたまま、公証人と証人2名にその存在を公証してもらう方式です。内容は秘密にできますが、実務上は利用されるケースは少なくなっています。
失敗しないためのエンディングノートと遺言書の併用フロー
「どのような場合にどちらを使えばよいか」を具体的に見ていきましょう。
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不動産、預貯金、自社株など財産の分け方を法的に明確にしたい場合 → 遺言書が必須です。特に財産額が大きい、相続人が複数いる、事業承継が絡むといったケースでは、確実性の高い公正証書遺言が第一候補となります。
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医療・介護・葬儀の希望、IDや口座の所在をご家族に伝えたい場合 → エンディングノートを活用しましょう。日頃から人生会議(ACP)としてご家族と話し合い、情報を更新していくことが大切です。
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費用を抑えたいが、遺言書の確実性も確保したい場合 → 自筆証書遺言と法務局保管制度の併用がおすすめです。これにより、自筆証書遺言の手軽さを保ちつつ、紛失や改ざんのリスクを回避し、手続きも簡素化できます。
エンディングノートの活かし方と記載内容の具体例
エンディングノートは、形式に決まりはありませんが、ご家族が困らないように具体的な情報を記載することが重要です。以下に記載内容の例を挙げます。
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医療・介護の希望(ACP/人生会議)
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延命治療に対する考え
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在宅介護や施設への入所の希望
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ご自身に代わって医療判断をしてほしい人の候補
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連絡先・手続き先
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親族、友人、主治医、顧問弁護士、顧問税理士
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加入している保険会社、年金事務所、証券会社、クレジットカード会社
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資産・重要書類の「所在」
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保険証券、通帳、不動産の権利証などの保管場所
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パソコンやスマートフォンのパスワードを管理している仕組み(パスワード自体ではなく、管理方法を記載する)
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葬儀・お墓・形見分けの希望
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葬儀の形式(家族葬、一般葬など)や参列してほしい人
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お墓の種類や希望場所
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誰に何を形見として渡したいかの希望
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※形見分けを法的な指示として行いたい場合は、遺言書に記載する必要があります。
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まとめ
エンディングノートと遺言書は、それぞれ異なる目的を持つ、ご自身の「想い」と「意思」を伝えるための大切なツールです。
遺言書は、財産の分配など法的な事柄を明確に定めて、ご家族間の争いを防ぐために不可欠です。一方、エンディングノートは、遺言書には書けないようなご自身の想いや希望、そしてご家族が困らないための実務的な情報を共有するのに役立ちます。
両方の役割を理解し、適切に使い分けることで、ご自身の将来に対する不安が解消され、ご家族も安心して手続きを進めることができます。ぜひ、ご自身の状況に合わせて、今日から準備を始めてみてください。


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