老後が近づいてくる50代や60代にとって、最も気になるのは「結局、老後生活に必要なお金はいくらなのか」という点ではないでしょうか。テレビや雑誌で「老後2,000万円問題」が話題になりましたが、ライフスタイルは人それぞれです。
最新の統計データに基づき、現実的な生活費の目安や、私たちが準備しておくべき資産の考え方を詳しく解説します。
老後の生活費は1ヶ月にどのくらいかかるのか
老後の生活を考える第一歩は、日々の暮らしにいくら必要なのかを把握することです。日本の調査データによると、世帯状況によって以下のような目安が示されています。
夫婦2人で「最低限の生活」を送る場合、月額の支出は約23万円から24万円程度とされています。一方で、旅行や趣味、外食などを楽しむ「ゆとりある生活」を希望するのであれば、月額約37万円から39万円ほどが必要になると考えられています。
また、単身世帯の場合は平均して月額約14万円の支出が一般的です。まずは自分がどのような老後を送りたいかによって、毎月の目標予算が決まってきます。
65歳から90歳までの25年間で必要になる総額のシミュレーション
毎月の生活費をベースに、受給開始から25年間(90歳まで)にかかる総額を計算してみましょう。
最低水準の生活を送る夫婦の場合、25年間で約6,900万円が必要です。ゆとりある生活を目指す場合は、総額で1億1,400万円を超える計算になります。単身世帯であっても、25年間で約4,200万円ほどの資金が動くことになります。
この数字だけを見ると驚かれるかもしれませんが、これはあくまで「支出の総額」です。ここから公的年金などの収入を差し引いた金額が、自前で準備すべき「貯蓄の目標額」となります。
公的年金で賄えない不足分と貯蓄の目標ライン
老後資金の大きな柱となるのが公的年金です。日本の標準的な夫婦の場合、2人合わせて月額24万円前後の年金を受け取れるケースが多いですが、現役時代の職歴や加入期間によって受給額は大きく異なります。
多くの金融機関や専門家が「2,500万円から3,000万円程度の貯蓄が安心の目安」と発信しているのは、年金だけでは足りない生活費の差額を補填するためです。
例えば、毎月の支出が年金受給額を5万円上回る場合、年間で60万円、25年間で1,500万円の取り崩しが発生します。これに加えて、医療費や介護費、住宅のリフォーム費用といった予備費を上乗せして考える必要があります。
50代と60代の貯蓄額の現状と中央値の重要性
周りの方々がどのくらい準備できているのかも、気になるポイントかもしれません。現在のデータでは、50代の平均貯蓄額は単身で約1,391万円、2人以上世帯で約1,147万円となっています。
60代になると、退職金などの影響もあり平均金融資産は約1,819万円まで上昇します。しかし、ここで注意したいのが「中央値」です。60代の中央値は約700万円となっており、平均値よりも大幅に低い数値が出ています。
これは、一部の資産家が平均を引き上げている一方で、貯蓄が十分でない層も一定数存在することを示しています。平均値だけを見て安心したり焦ったりするのではなく、自分の家計状況を冷静に分析することが大切です。
老後資金の不足を補い資産を増やすための具体的なアクション
今からでも遅くはありません。老後のお金に対する不安を解消するためには、以下の3つのポイントを意識してみましょう。
1つ目は、税制優遇制度の徹底活用です。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用することで、効率的に資産を形成しながら節税メリットを受けることができます。
2つ目は、長く働く仕組み作りです。60歳で完全にリタイアせず、パートやフリーランスとして少しでも収入を得る期間を延ばせれば、貯蓄の取り崩し開始時期を遅らせることができます。
3つ目は、家計の固定費見直しです。老後に向けて保険の掛け金や通信費、住まいのコストを最適化することで、少ない予算でも豊かな生活を送れる「低燃費な家計」を作ることが最大の防御になります。
老後生活に必要なお金に正解はありませんが、早めに計画を立てることで選択肢は確実に増えていきます。

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